(東京高判・昭和32年12月11日東京高裁判決時報8巻12号民304頁)
(東京高判・昭和32年12月11日東京高裁判決時報8巻12号民304頁)
「民法第145条に所謂当事者とは,時効の完成により直接に利益を受<べき者を指称するものと解すべく,当事者の数人ある場合その一人若しくは数人が各自独立して時効を援用することができるかどうかに関し一般に規定するところはないが,その援用の方法につき特段の規定の存しないこと,また我が民法が当事者の援用を俟って始めて時効につき裁判をなし得べき制度を採用した精神に鑑みるときは,叙上の場合各当事者はそれぞれ独立して時効を援用することができると同時に裁判所はその援用した当事者の直接に受<べき利益の存する部分に限り時効につき裁判することができ,援用のない他の当事者に関する部分に及ぼすことを得ないものと解するのが相当である(大正8年6月24日大審院第一民事部判決大審院民事判決録第25輯第17巻第1095頁参照)。本件においてYは,前示C<被相続人>の相続人の一人として右Cのために完成した取得時効を援用し,本件土地建物く相続財産>は右Cの死亡によりYを含めた直系卑属5名の共有に帰属しXの所有に属しないと主張するのであるが,Yを除く他の共同相続人4名において右時効を援用した事跡のない本件にあっては,叙上説示する如く裁判所としては,Yの法定相続分5分の1の限度においてYの右時効援用の効果を判定すべきものであるから,結局Yは前示時効の完成並びにCの死亡による相続の結果、本件土地建物の5分の1の持分を取得したものと判断するにとどめる外はない。Xは,Cのため完成した取得時効の援用は共同相続人全員共同でしなければならないと主張するが,Yが右時効の援用により直接に受くべき利益の存する限度即ち前示法定相続分に関する限りにおいては自己単独で右時効を援用し得ることは多言を要しない。」